個人開業医がMS法人を設立するメリットと注意点

個人でクリニックを経営していると、医業以外の経費管理や節税対策、家族への給与支給など、税務・経営面で悩む場面が増えてきます。

その際によく検討されるのが「MS法人」の活用です。

今回は、個人開業医がMS法人を設立するメリットと注意点を整理します。

MS法人を設立するメリット

MS法人を設立すると、以下のようなメリットがあります。

• 節税効果が期待できる
• 家族への給与支給がしやすい
• 経営の効率化・資産管理の柔軟化ができる

それぞれ確認していきましょう。

節税効果が期待できる

開業医の所得は、累進課税により高い税率が適用されやすくなります。

医院の業務をMS法人に委託し、家賃や人件費、事務管理費などを法人に計上すれば、所得を分散させることが可能です。

そのため、全体としての税負担を軽減できる可能性があります。

家族への給与支給がしやすい

MS法人を設立すると、家族を役員や従業員として雇用し、給与を支給できます。

所得分散の効果を得るとともに、家族も事業に関与する形を整えやすくなります。

経営の効率化・資産管理の柔軟化ができる

不動産の所有やスタッフの雇用、医療機器のリース契約などをMS法人が担うため、医院の経営管理を分離できます。

資産や契約を法人にまとめれば、リスク管理や事業承継の準備にも役立ちます。

MS法人設立の注意点

一方で、MS法人設立には、以下のような注意点があります。

• 節税目的とみなされるリスクがある
• 設立・維持のコストがかかる
• 医業そのものは行えない
• 税務調査の対象になりやすい

それぞれ見ていきましょう。

節税目的とみなされるリスクがある

MS法人を設立しても、実態が伴わなければ「節税のためだけ」と判断され、否認される可能性があります。

設立・維持のコストがかかる

会社を設立するには登記費用や顧問料、毎年の法人税申告などのコストが発生します。

そのため節税効果と比較し、メリットが上回るかをシミュレーションする必要があります。

医業そのものは行えない

MS法人はあくまでサポート会社であり、診療行為を行うことはできません。

業務範囲を逸脱しないよう注意が必要です。

税務調査の対象になりやすい

MS法人は節税スキームとして利用されやすいため、税務署からチェックされやすい傾向があります。

透明性のある会計処理と、契約内容の整備が欠かせません。

まとめ

MS法人は、開業医にとって節税や経営効率化、事業承継の準備など、多くのメリットをもたらす可能性があります。

しかし設立にはコストがかかり、税務リスクも伴います。

安易に節税目的で設立すると、かえって不利益を被ることにもなりかねません。

MS法人を検討する際には、事業内容や将来設計を踏まえつつ、税理士などの専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。